第2章 物の怪と札師
そう、
山犬が見る斎は凶暴な程、冷酷な霊気を纏っているのだ。
「鑑みるよのなのコトワリにそむくモノ、
我ちからを示して眷属とす!」
シュ、何枚もの呪符が山犬を囲む。
ボッと炎が上がる。
火の元など何処にもないのに。
基兼が唖然と見ていると、
斎は持っていた基兼の刀を山犬に向かって真っ直ぐ投げ放った。
その刀は矢のように、呪縛されて動けない山犬の額にささった。
「ヴガァォァァァー‼︎‼︎」
咆哮を上げた山犬は一瞬にして姿を消した。
「御人、大丈夫ですか?」
歳半ばの男は斎に揺すられ眼を醒ます。
「私は……」
機嫌の良い晴明。
「実継と申すのか。
ここの暮らし方は我々が教えるので、心配はいらないよ」
この『心配はいらない』は斎に帰って良いと言っているのだと、晴明と斎以外には解らない。
「私の手柄ですが……」
「お前は眷属を増やしたではないか」
シッシッと手を振って追い払う仕草をする晴明。
(案外晴明様は子供っぽい)
斎の隣りに座る基兼が内心で苦笑する。