第2章 物の怪と札師
飛び上がったと同時。
「呪縛」
斎の澄んで静かな声。
揺れる白い気。
柳の指が基兼の刀を取り握る。
「お前はこの中から逃げられない。
どうする?
この刀でお前を消滅させる事も容易だよ」
山犬に切っ尖を向け、尚、涼しげな顔。
(斎…刀なんて…)
グルルルルーーガァァッ!
山犬は牙を剥き、爪を翻し飛び掛かってきた。
「⁉︎」
躱そうとしない斎に基兼が慌てて庇う。
「ッッ‼︎」
山犬の霊気だろうか、掠れて手の甲と腕に血が滲む。
「斎、怪我はないか?」
「……」
基兼を見る斎は物凄く冷めた表情をしていた。
(な…ん…だ?)
「馬鹿め」
「え?俺?」
(庇ったこと怒ってんのか?)
基兼は斎に何故、怒られるのか分からなかった。
「…お前は京に連れて行く事にする」
静かな斎に山犬が怯んだ。