第2章 物の怪と札師
ジャリ、シャリ、シャリシャリ…
畳が擦り切れる音を伴いながら基兼が山犬の札師をなんとか一周する。
呪符を拝みながら呪文を唱えていた斎。
サラッと風が吹いているかの様に着物が揺れる。
揺れに合わせ、白く細い指先に挟んでいた呪符を振る。
意思があるかの様に呪符が飛ぶ。
(そんな……斎が操ってんのか?)
呪符は基兼の書いた円に張り付くと、
嘘か誠か、カッッと光り輝く。
「ゔ…がぁぁぁぁっ!!」
「な"⁉︎」
山犬の札師の苦し気な咆哮に基兼がたじろぐ。
「ゔゔゔぅ………ぐ……」
ドサッ
札師の軀が崩れて落ちて重い音がした。
その軀の横に狂犬の様な大きな動物が牙を向いて飛びかかろうと構えている。
グルルル…
山犬が体を落とした。
次瞬、
「来る‼︎」
基兼が警戒の声を上げた。