第2章 物の怪と札師
「山犬の怪だ」
(山犬…)
基兼が見る男には
いつの間にかモサモサした獣毛の耳と尻尾が出現していた。
「貴様…いつから気付いていた!」
「少々鼻が利くものでね」
飄々と答える斎に札師は苛立ちを見せる。
「何が目的だ!
俺を追い詰めて山へ追いやるのか!」
咆哮に空気が揺れる。
「斎!危険だっ」
「基兼、コレを柄に巻き刀を握れ」
斎に手渡された札。
(?)
基兼は何がどうなのか分からないが、
言われた通りにする。
「…握ったぞ」
「あいつを斬る姿を思い浮かべながら、
地面あいつの足元の地面に刀をつけて円を描け」
(斬りながら…円を……)
基兼は構えた刀を下ろすと、斎に言われた通りに胴切りする自分を思い描きながら、威嚇し鋭い眼光で構えている山犬の札師を周りを一周しはじめる。