第2章 物の怪と札師
恐ろしい顔の札師、
涼しい顔の斎、
向かい合ったまま、ジリジリとした空気が流れる。
見兼ねたのは基兼だった。
「貴方の札が優れているとの噂が京までとどいています。陰陽寮に、と言う話しもあるんです」
説明する事で何か誤解、すれ違いが解消するかと思ったが、
「俺は内裏に召し抱えられるつもりはない」
「⁉︎…し、しかし、食べて暮らして行かねばなるまい」
「食うには困らん」
基兼の話しには靡かない。
「困るであろう?外に繋いでいたヤツらは私が逃してしまったぞ?」
「なに?」
札師だと言う男の表情が変わる。
釣り上がった眼。
釣り上がった口。
その奥に見えるのは暗い紅い瞳。
そして、大きな犬歯。
「さ、斎……っ、この男はっ」
基兼が慌てた声を上げる。