第1章 き、きちゃった?!
そう、言葉ならどうとでも言える。
むっと口を結んだ俺を横目で見た玲人がわざとらしくぱっと手を離した。
「…俺って信用ねーのな」
ポツリと呟かれた言葉に胸がズキッと痛む。
離れて行った温もりがすでに恋しくなるも、それを追いかける事は出来なかった。
だって俺だって初めてだったし…。
だとしたら考えられるのは玲人しかいない。
俯いたままで玲人を盗み見しながらズキズキと痛むお腹をゆっくりさする。
……痛い。
泣きそうだ。
俺と玲人の間には沈黙だけが落ちていて、時折コーヒーをすする音が隣から聞こえてくるだけだ。
なんでこんな事になったんだっけ…。
だんだんと頭が冷静になってくる。
…俺のせいだよな。
あんなこと言われたら誰だって怒るかもしれない。
しかも勝手に生徒会室に来て騒ぎ立てて…。
「……ごめん」
急に襲って来た罪悪感に俺は素直に謝罪の言葉を口にした。