第1章 き、きちゃった?!
涙目で怒鳴る俺を見て玲人はため息を付くとマグカップをテーブルの上に置いた。
「とりあえず落ち着け。…で、なんだって?」
玲人に促されて俺もソファーに腰を下ろす。
ぽんぽんと背中を撫でてくれる体温に徐々に落ち着きを取り戻し、ぐいっと涙を拭ってから俺は口を開いた。
「さっき、トイレに行ったら…出血してた…」
口にすると実感が湧いて、この歳で性病にかかってしまった自分に絶望を覚えまた視界が涙で歪む。
「……痔じゃないのか?」
「んなわけねーだろっ!痔とかおっさんがなるやつだろ!!」
痔、と言う単語にがっと牙を向いた俺を見て玲人は再度ため息を吐いた。
「お前それ、ただの偏見だろ…」
偏見でもなんでも自分が痔だと考えたくもない。
だからって性病もそれはそれで嫌なのには変わりないが…。
ぐっと言葉に詰まった俺の頭を自分の肩の上に誘導した玲人は静かに告げるように、囁いた。
「俺は、圭としたのが初めてだって言ったろ?」
「…言葉でならどうとでも言えんじゃん」