第7章 歪んだ愛情
「……リンのこと、迷惑だなんて思ったことは一度もないし……ここにもオレが呼びたいから呼んでるんだ……何も気にすることなんかねぇ…」
『……三ツ谷君…』
「…いーんだよ。……オマエの所にマイキーが帰ってくる手伝いができるなら…それで…」
『……』
「……だから…これからも……ちゃんとオレを頼れよ?」
『………ありがとう…ございます…』
「……」
『………………三ツ谷君が側に居てくれて…本当に良かった……………三ツ谷君は……私の光です…』
「……っ…」
真っ直ぐな瞳に心の奥を見透かされそうで
思わず視線を逸らした
感謝されるようなことなど
何もしていない
それどころか
オレは自分の事を
嫌になるくらいに独りよがりで、利己的な人間だと思っていた
話の方向を変えたくて
オレは拳銃を手に取った
「……短剣なら装飾付けたりできるんだけど……コレは必要ねぇな…」
『……フフ……ですね…』
リンが帰った後の静かになったアトリエで
早速机に向かい
スケッチブックを開いてドレスのデザインを描き始めた
オレは側から見れば
" 夢に向かって進む、若手のデザイナー "
なのだろう
才能を買われて入った職場では、将来有望と謳われ
指名の仕事も少しずつ増えてきて
それなりにやりがいを感じていた
リンの言うように数年後には独立したいと考え
そのための人脈作りなども進めていた
何人もの女から言い寄られ
そちらも特に不自由することはなく
順調に人生を歩んでいる
ように
見えているのだろう
けれど…
「……好きな女ひとり幸せに出来なくて…何がデザイナーだ…」
独り言を呟いて
唇を強く噛んだ
リンが幸せじゃなければ
オレの夢など
何の意味も持たなくなってしまうのだ
描き上がった数点のラフを見比べながら
更にイメージを広げる
彼女の為に作るドレスのアイデアなら
いつだって
いくらでも湧いてきた
(……リン………オマエの笑顔が見られるなら…オレはなんだってする…)
歪んだ想いを塗りつぶすように
オレはペンを動かし続けた