第7章 歪んだ愛情
以前
リンは丸腰で参加したパーティーで
敵対する組織の連中に襲われたことがあった
その時は彼女の武闘術でなんとか事なきを得たが、その話を聞いたオレはそれ以来、彼女が身を守るための武器を違和感なく隠せるようなドレスをデザインするようになった
オレは拳銃を手に取り
形や重さを見る
「……ワルサーPPSか……この大きさならドレープと繋がるようなデザインで自然に隠せると思う……立食なら…腰元に大きめのリボンかコサージュを付けるか………リンはどっちがいい?」
『…お任せします……三ツ谷君なら全てにおいて間違いないので』
「……それはそれは……顧客にここまで信頼されるなんて…光栄だな…」
『…とんでもない……将来あるデザイナーの三ツ谷君にこんな仕事をお願いして…いつも申し訳なく思ってます…』
そう言って俯いたリンに
オレは言った
「……これでリンを守れるなら…どんなドレスだって作ってやるよ…」
『……ありがとうございます…………でも…本当は私なんかがここに出入りしちゃいけないと思うんです…』
リンは
よくこういう言葉を口にした
その度にオレは
彼女が2人の間に作っている壁の存在を見せつけられたような気分になるのだった
「……何でまたそんな事言うんだよ…」
『…っ…だって……三ツ谷君はこんな立派なアトリエを持って、せっかく順調に夢に向かってるのに……私との繋がりをもし誰かに知られたら…』
「…リンとのことを他人がどう思おうが関係ねぇだろ…」
『……でも……こういう仕事は……評判とか…世間体とか…すごく大切ですし………これから独立を考えてるなら…尚更…』
「迷惑かけたくない」
『…っ…』
「…………そんな事言って……オマエもマイキーみたいにオレ達から離れてくつもりなのかよ…」
彼女の傷をえぐるように
ワザとマイキーの名前を出した
「……残された方の気持ち…誰よりも分かってるのはオマエだろ…」
『…………スミマセン…』
申し訳なさそうに謝るリンに
オレはなおも続けた
「………リン………オレは…巻き込まれてる訳じゃねぇ……自分の意思で動いてんだよ…」
『……』