• テキストサイズ

もういちど。【ハイキュー!!】

第1章 出会い


高校生活にも慣れてきた頃、数学の担当教師が問題を解説する声とカリカリと板書を書き写すシャーペンの音が教室に響いていた。

あずさは困っていた。
月島の背中越しに辛うじて板書の端が見える。

前が見えないと言ったら月島は気を悪くするだろうか。
あずさは昔、後ろの席の男子に「せんせーい!巨人の背中しか見えませーん!」と言われて喧嘩したことを思い出した。

やめておこう。自分は一番後ろの席で自分以外に文句を言う者はいないのだからといつも通り、体を傾けて黒板を覗くことにした。

授業終了のチャイムが鳴る。
「すまん、日直!教材倉庫に返しといてくれ」
そう言って手を合わせて頭を下げると教師は教室から出て行った。

今日の日直は誰かと黒板に貼られた日直の名前を確認すると自分だったことに気付いて最悪だと項垂れた。
そう思いながら教卓へ行くと今日使われた大量の教材が目に入り、これは骨が折れそうだと思った。

「はやく終わらせようよ」
後ろから声をかけられてあずさが振り向くと、月島が立っていた。

もう1人の日直は月島のようだ。

月島は教材を持ち上げると行くよと歩き出すのであずさは慌てて残りの教材を手にして月島を追いかけた。
月島は重い方を持ってくれたようで、あずさの方はとても軽かった。

「大丈夫?重くない?」
月島の線の細さに不安になってあずさは声を掛けた。
「別に」と彼は涼しいを顔して答えた。

「そっか、ありがとう」
そう言って微笑むと月島はちらりとあずさを見て「・・・別に」と顔を背けてしまった。

倉庫の中は教材ごとに棚が分けられているようで、互いに黙々とそれぞれの棚に教材を戻していく。

あずさは自分の背よりも高い位置にある棚に戻そうと出来る限りの背伸びをしたりピョンピョンと飛び跳ねるが全く届かない。

そんな彼女を月島は面白いものを見るように後ろからしばらく眺めていた。

「なにしてるの」
月島はあずさの手から教材を奪うといとも簡単に棚に戻してしまった。

月島の行為にあずさはキュンとときめいていた。
自分には縁がないと思っていたあずさにとって、背伸びをしているところを男子に助けてもらういまのそれは憧れのシチュエーションだった。
/ 38ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp