第2章 マネージャーとして
及川はあずさの頭を撫で回しながら続ける。
「今日は最後の数点しか戦えなかったけど・・・次は最初から全開でやろうね。あ、そうそう。サーブも磨いておくからね」
チラリと月島と日向に視線を寄越しながら言った。
「君らの攻撃は確かに凄かったけど、全ての始まりのレシーブがグズグズじゃあすぐ限界が来るんじゃない?強烈なサーブ打ってくる奴はなにも俺だけじゃないしね。インハイ予選はもうすぐだ。ちゃんと生き残ってよ?俺はこの・・・」スッと及川は影山に指を向けて「クソ可愛い後輩を公式戦で同じセッターとして正々堂々、叩き潰したいんだからサ」
と挑発した。
レシーブなら特訓すると宣言する日向に
「レシーブは一朝一夕で上達するモンじゃないよ。キャプテン君はわかってると思うけどね」
と切り捨てた。
「ところで、あずさはどうしてここにいるのかな?まさか試合にまで出てるつもりじゃないかと先輩、ハラハラしちゃった」
未だ自分の背に腕を回しているあずさに目を向けニコリと笑って彼は問うた。
「えっと・・・」
「高校でも男子の方に混ざってるの?言っただろ?逃げずにちゃんとチームメイトともコミュニケーション取らないとダメだって。試合の時に上手く合わせられなくて困るのはお前だぞ。男子と試合に出るわけじゃないんだから」
中学の時に世話になった憧れの及川にあずさはバレーを辞めたことを伝えられなかった。
「・・・そうですよね」
結局言い出せず、微笑むのに精一杯だった。
そんな2人のやりとりに影山が口を挟んだ。
「そいつ、今は男バレのマネージャーです」
唐突な影山の言葉にあずさは自分のタイミングで伝えたかったのにと焦った。
及川が残念がるのが目に見えていた。このまま伝えずにいても良いかもしれないとも思っていたのだが・・・。
「は?」
及川の声にハッと彼女は彼を見上げた。
及川はどういうことだと彼女に問う。
「・・・中学でバレーは辞めたんです」
「バレーはあずさの生き甲斐なんじゃなかったけ?」
及川は感情のない目であずさを見つめた。
彼女はそっと及川から離れて彼の視線から逃げるように顔を俯かせた。
「でも・・・一人じゃバレーは出来ないから」
「ふ〜ん。逃げたんだ」
冷たい彼の言葉にあずさはヒヤリとした。