第2章 マネージャーとして
正確なコントロールに焦る烏野に及川は余裕そうににこりと笑った。
「うん、やっぱり途中見てたけど・・・6番の君(月島)と5番の君(日向)、レシーブ苦手でしょ?1年生かな?」
狙われ始めた月島にあずさは目を向ける。
大丈夫。蛍はまだレシーブに穴があるけど、このチームなら大丈夫だと彼女は自分に言い聞かせた。
「じゃあ、もう一本ね」
及川は再び宣言して月島にサーブを打ち込んだ。
またしてもボールは月島の手に当たりコート外へ弾き飛ばされた。
悔しげに歯噛みする月島に未だ狙われていない日向は苛立った。
「おい!コラ!大王様!!おれも狙えっ、取ってやるっ!!狙えよっ!!」
「みっともないから喚くなよ!」
「なんだとっ!?」
声を上げた日向に月島は苛立ちながらも自分を保とうとした。
そんな月島に日向は先程のやりとりを思い出した。
「バレーボールはなあ!ネットの“こっちっ側“に居る全員!!もれなく「味方」なんだぞ!!」
田中の言葉を吐き出す日向に月島はたじろぐが、確実に場の空気は変わった。
「よし、全体的に後ろに下がれ。月島は少しサイドラインに寄れ」
澤村が守備範囲を広げることで月島をカバーしようと指示を出した。
しかし、及川はサイドライン寄りいる月島の真正面を正確に狙って打ち込んできた。
コントロール重視の分先程よりも弱い威力になんとか月島はボールをあげる。
青城のチャンスボールかつ今の烏野のローテーションはブロックに一番高さがないと菅原は焦った。
あずさも今の状況に祈るようにボールを目で追う。
しかし、金田一がブロックを躱し、スパイクを打ち込む場所に日向は現れた。
打ち込まれたスパイクは日向の手に当たり烏野のチャンスボールとなる。
「日向!ナイスワンチ!」
あずさは思わず叫んだ。
すぐに端まで移動した日向へトスが上がり、スパイクが決まった。
試合終了の笛が鳴る。
青葉城西 23−25 烏野
セットカウント2−1で烏野が青葉城西に勝利した。
月島がレシーブを上げてからの出来事が一瞬に感じられ、あずさは胸が熱くなった。
まだチームとしては荒削りな烏野が本領発揮をしていないまでも青城に勝ったことに嬉しくなった。