第2章 マネージャーとして
試合を終えた選手たちが武田の元へ集合する。
「先生、なんか講評とか」
菅原が武田に耳打ちすると試合に圧倒されていた武田はハッとして口を開いた。
「あっそっ、そうか!えーと、僕はまだバレーボールに関して素人だけど・・・なにか、なにか凄いことが起こっているんだってことはわかったよ。新年度になって凄い1年生が入ってきて・・・一筋縄ではいかなくて、だけど・・・澤村君が言ったことがその時はわからなかったけど今日、わかった気がする。」
興奮が冷めやらぬままどんどん言葉が溢れてきた。
「バラバラだったらなんてことない一人と一人が出会うことで化学変化を起こす。今この瞬間もどこかで世界を変えるような出会いが生まれていて、それは遠い遠い国のどこかかもしれない。地球の裏側かもしれない。もしかしたら・・・東の小さな島国の北の片田舎のごく普通の高校のごく普通のバレーボール部かもしれない。そんな出会いがここで・・・烏野であったんだと思った。大袈裟とかオメデタイとか言われるかもしれない。でも、信じないよりはずっといい。根拠なんかないけどきっと、これから、君らは強く強くなるんだな」
ポカーンとする日向と影山に、ポエミーすぎたかと武田は焦った。
そんなことないと否定する澤村にあずさも一緒になって否定した。
この子らが強くなる為にも早く技術を教えられる指導者を見つけないとな・・・と武田が呟くのを聞いてあずさはワクワクした。
挨拶を終えた烏野一行はバスへと向かう。
澤村は徐に口を開いた。
「武田先生はああ言ってくれたけど、いくら日向と影山のコンビが優秀でも正直周りを固めるのが俺達じゃあ弱い・・・悔しいけどな」
「おお〜さすがキャプテン!ちゃんとわかってるね〜」
正門に差し掛かったところで、門に背を預けるようにして彼らを待つ者がいた。
「及川先輩!」
彼を見つけて一目散に走り出したのはあずさだった。
あずさは何の躊躇いもなく嬉しそうに及川に抱きつくのを見て影山以外の1年と田中は驚愕した。
及川も満更でもないようにあずさの髪に触れ、「髪、伸びたね」などと言っている。
その光景に苛ついた田中は及川に凄む。
「なんだコラ。やんのかコラ。うちの天使ちゃんにさわんなコラ」
「そんな邪険にしないでよ〜。アイサツに来ただけじゃ〜ん」
及川は飄々と田中の威嚇を躱した。
