第2章 マネージャーとして
3対3の後、あずさは月島と山口に一緒に帰ろうと誘った。
三人は陽の沈みかけた通学路を静かに歩く。
沈黙を破ったのは眉を顰めていた月島だった。
「日向たちの練習に付き合ってたんだ?」
「うん、飛雄に頼まれて・・・」
「飛雄ね・・・」
月島は影山の名を呟いた。
「そう言えば、2人とも同じ中学だもんね」
山口は月島の顔色を窺いながら言うと、
「幼馴染なの。腐れ縁だけどね」
彼女はえへへと笑って答えた。
「怪我でバレー辞めたんじゃなかったの?」
不機嫌な声色で月島は続ける。
「あれ?そんなこと月島くんに言ったっけ?」
あずさは頭を傾げる。
「朝倉さんと話してるの聞こえた」
「あー、あれね。・・・嘘ついたんだ」
あずさは気まずそうに目を伏せた。
「嘘?なんで?」
山口は不思議そうな顔をしてあずさを見た。
「バレーを・・・やらなくて良い理由にしたかったの。あれ以上誘われてもわたしは期待に応えられないから。もうバレーが楽しくないって思った。・・・でも、ここ最近凄く楽しかったな。今日の試合も凄く良かったよ」
あずさは2人に笑いかけたが、悲しみを孕むそれに月島たちは顔を顰めた。
一体彼女は何を抱えているのだろうかと。
ハッとしたあずさは慌てて
「それより!火曜日の試合楽しみだね!」と満面の笑みを浮かべ青葉城西との練習試合についての話題に移行する。
先程の表情が嘘かのようにあずさは頬を赤く染め嬉しそうに笑った。
「・・・何で嬉しそうなの?」
「青城にね、憧れの人がいるんだ」
顔を綻ばせる彼女に月島はチクリと胸が痛むのを感じた。
それは誰のことかと月島が口を開きかけたとき、坂ノ下商店前にいた田中が「おーい、お前らも食えよー」 と3人に向かって声をかけた。
「あざーッス」
あずさと山口は田中の元まで坂を駆け降りていき、月島は出かかった言葉をのみこんだ。
澤村に奢ってもらった中華まんを口にした後、3人は家路につく。
「じゃあ、わたしはこっちだから」
あずさが道を指すと「辻さんを送って行くから先に帰って」と月島は山口と別れた。
「大丈夫だよ!?いつも1人だし」
慌てて月島の申し出を断ると「いいよ。もう暗くなって危ないし」とぶっきらぼうに言う彼はこっちだよね?と言ってあずさの先を歩き始めた。