第1章 出会い
あの日、県予選の決勝で影山とスパイカーとのコンビミスが目立った。
きっと影山はブロックを振り切りたかったのだろう。
速さに拘りすぎた影山は無茶なトスを上げスパイカーを置き去りにしたプレーをし続けた。
第1セットの相手のセットポイントで影山はトスを上げた。
でも、そこには誰もいなかった。
影山がチームメイトに拒絶された瞬間だった。
中学最後の大会で影山はそこで、ベンチに下げられた。
3タッチ以内で相手コートへボールを返す。
同じ人が連続でボールを触ることはできない。
チームでボールを繋ぐバレーであんな自分本位なプレーが許されるはずがなかった。
拒絶したチームメイトの気持ちも分かる。
でも、孤立した影山を見てあずさは涙が溢れた。
チームメイトに拒絶される恐怖を知っていたから。
「影山!!!」
日向が影山を呼んだ。
日向にトスがあがる。
ブロックは付いてきていない。いける。
日向の振り下ろした手は指先を掠め、何とか得点に繋がった。
影山は田中の方にトスをあげようとしていたはずなのに、日向の声と動きに咄嗟に反応してあんなに正確なトスをあげた。
天才的な技術、やっぱり飛雄はすごいとあずさは思った。
どこだって跳ぶしどんなボールでも打つから俺にトスを持ってこいと影山に力強く言う日向にあずさは心が震えた。
わたしにもあんなチームメイトがいたら、あんな真っ直ぐな心があれば・・・と。
「なんでもがむしゃらにやればいいってモンじゃないデショ。人には向き不向きがあるんだからさ」
と否定する月島に日向は言った。
「”あんな風”になりたいって思っちゃったんだよ。だから不利とか不向きとか関係ないんだ。この身体で戦って勝って勝って、もっといっぱいコートに居たい!」
日向が言った”あんな風”とはきっと、”小さな巨人”のことだろう。
彼に憧れて烏野高校へ来たと言っていたことをあずさは思い出した。
かつて小柄な身体ながらも烏野高校を全国へ導いたエースだ。
そんな”小さな巨人”のようになりたいという日向を否定する月島に日向は真っ直ぐに思いを伝えた。
それでも否定を続ける彼に影山が言う。
「スパイカーの前の壁を切り開く。そのため為のセッターだ」