第1章 出会い
「それってどう言うことですか?」
どうして日向には特別なことなのか分からなかった。
「日向は中学時代、部員が少なくて試合にも出れなかったそうだ。バスケ部の友達にボールを上げてもらってたって。ほんで、中学最初で最後の試合は寄せ集めチームで出場して影山率いる北川第一にボロ負けだ」
そうか、日向はずっと満足にバレーが出来なかったのか。
日向は中学3年間ずっとバレー部だと言っていたはずなのに素人同然のあの動きに納得した。
「土曜日、勝つぞ」
満身創痍の日向に影山は仏頂面ながらもそう言った。
照れたように踵を返す影山に日向も
「あっゼエ、あたっハァ、当たり前どぅあオエェッ」
吐いた。
水っ水っと大騒ぎする先輩たちと目の前の惨状に先程の光景が嘘のようで笑ってしまった。
今日も誰もいない教室に入る。
まだ7時、仮眠を取ろうとあずさはあくびをかみ殺して席についた。
徐々に騒がしくなりだした教室に少しずつ意識が覚醒していく。
あずさはゆっくりと顔をあげた。
やはりこちらを見つめていた月島と目があった。
「おはよう。月島くん、山口くん」
今日は山口も視界に入れて挨拶をした。
「辻さん起きたんだね。おはよう!」
と山口も挨拶を返してくれる。
「おはよ・・・今日は、よだれの痕がついてる」
「えっ、嘘!?」
「うん、嘘」
月島の指摘にドキリとしたが、あの意地悪い笑みを浮かべてニヤニヤしている月島に
「ムカつく!」
とあずさは立ち上がった。
腹を立てて「ムカつく顔で見ないで!」とか悪態をついても月島は「朝からうるさいよ」と何でもないように返すのであずさはさらに眉間の皺を深くして月島を睨みけた。
ワーワー騒ぐあずさに山口が「ツッキー!」と慌てながら止めに入るのはいつもの光景。
そしてそこにりょうこも加わってより騒がしくなると月島はヘッドフォンをして離脱するまでがセット。
優しくわたしの話を聞いてくれるのに、わたしを揶揄って遊ぶ月島くんは良い顔してる。本当にムカつく。とあずさはムッとした顔をした。