第1章 出会い
あの後は月島にいつも通り話しかけて、月島もいつも通り相槌を打ってくれた。
月島にとってあずさに触れたのは大したことのないような感じだったし意味はないのだろう。
ただ、寝跡を指摘するために触っただけだと自分を納得させた。
あっという間に放課後になり、月島と山口が「じゃあまた明日ね」と教室を出ていく。
あずさも練習に合流する為に気合いを入れて席を立った。
昨日とは違い体操服に着替えて校庭へ向かう。
校庭へ行くと影山はまだ来ておらず、日向が先にアップを始めていた。
あずさも横に並んで一緒にアップを始める。
「今日は体操服なんだね!」
日向が話しかけてきた。
「うん。昨日は急だったから」
アップを終えて「わたしが打つよ」と日向を練習に誘った。
「まじで!?ありがとう!」
と日向はレシーブの構えをとる。
わたしが打つよと言ったもののあの日以来バレーはしていない。上手くいくだろうかと少し不安になった。
ごくりと生唾をのんでスパイクを打つと、先程の不安は杞憂だったようでボールはうまく日向の方へ飛んでいく。
だか、日向のレシーブでボールは在らぬ方へ飛んでいった。
昨日の上達ぶりが嘘かのような光景に愕然とした。
「日向、また下手くそになってる」
「もういっぽん!」と言いながら日向はボールを取りに走った。
「オーバーとアンダーの使い分け全然出来てない!ボールをよく見て!」
そう言いながら日向へボールを飛ばす。
徐々に日向のレシーブはあずさの方へ返ってくるようになった。
久しぶりのバレーにあずさの息も上がる。
楽しい!もっとしたい!とレシーブ練習に熱中した。
「わりぃ、遅くなった!」
と影山が走ってやって来た。
あずさも日向も息を上げながら遅いよと返す。
あずさは休憩したいと言って対人レシーブの相手を影山と交代した。
いくら楽しくても現役時代のときのようにはいかない。
あずさはしばらく影山と日向のレシーブ練習を眺めていた。
陽が落ちてきてからも練習を続ける2人に完全下校時刻が迫っていることを告げ、練習を切り上げさせた。
「じゃあ、また明日早朝練でね」
「おう。気をつけて帰れよ」
「辻さん、今日もありがとうな!楽しかった!」
そう言って笑った日向にわたしも楽しかったと言って、2人と別れた。