第1章 出会い
クラスメイトが登校してきたのだろう。
教室はいつしかザワザワと騒がしくなっていた。
登校してきた月島は自席の後ろの席で眠る少女を見つけた。
彼女を起こさないように月島は席につく。
山口が月島に話しかけているが月島は山口にシッと人差し指を唇に当てて静かにするよう促した。
そして彼も月島と一緒に彼女に目を向けた。
腕を枕に眠る彼女のあどけない顔に月島はドキリとした。
眠っていても分かる端正な顔立ち。少し赤みのある頬、長く黒い睫毛はあまり日焼けのしていない彼女の肌によく映えた。
目鼻立ちの整った顔立ちに彼女は背の高いこともあってか入学してから注目を集めていた。
月島も彼女のことを可愛いと言う声をよく耳にしていたし、月島自身も彼女のことを綺麗だと思っていた。
ぱちりと彼女の目がひらく。
まだ眠そうな彼女は顔を上げると驚いたように目を見張った。
「おはよ」
「お、はよう」
こちらをじっと見つめる月島と目が合ってドキリとした。
「今日早かったの?ずっと寝てた」
「うん。ちょっとだけ眠ろうと思ってたんだけど、結構寝てたみたい」
「うん、ここ痕ついてる」
そう言って月島はあずさの頬に触れた。
「え?」
一気に顔が熱くなるのを感じ、思わず仰け反る。
「ちょちょちょっと月島くん!何してるのかな!?」
月島に触れられた頬を両手で押さえて抗議をするが月島は何でもない様に「あ、ごめん」と呟いた。
未だに顔の熱は冷めず次の言葉を発しようとあずさは魚の様に口をパクパクさせるが言葉は出てこなかった。
そんなあずさを見て月島は口角を少しだけ上げてふわりと笑っていた。
無表情か眉間に皺を寄せて不機嫌そうにしている顔が基本の月島の笑顔にあずさは胸を高鳴らせた。
悪態をつくときの笑顔とはまた違うそれに心を奪われた。
頬に触れた月島の指先や笑みに先程の出来事が頭に浮かびあずさは目をまわした。
「あずさおはよう!」
りょうこの声にハッと我に返った彼女は月島の方を見ると月島は既に前を向いて山口と喋り出してしまっていた。
山口もいたことに気付かなかったあずさは先程のやりとりを見られていたのかと恥ずかしくなった。
「おはよう!」
りょうことの会話で徐々に冷静さを取り戻し、顔の熱も引いていった。