第1章 出会い
「じゃあ、ここで」
「おう。じゃあな」
「辻さん今日はありがとう!明日もよろしくお願いします!」
「うん。二人ともよく休んでね」
あずさは二人の背中を見送ってから歩き出した。
ピピピピッ
いつもより少し早い時間に部屋に鳴り響くアラーム音に久しぶりにこんな時間に起きたなとあずさは目を開けた。
時間を確認すると水曜日の午前3時00分。
身支度を整えるとあずさは日課の筋トレを始める。そしてその後は時間が許す限り近所をランニングするのだ。
あずさはバレーをやめてからもトレーニングだけは続けていた。
中学最後の大会が終わった後、もうバレーはやらないと自分で決めたのに小学生の頃から費やしてきたバレーがなくなって、悔しく寂しくてぽっかりと心に穴があいてしまった。
朝から晩までバレー漬けだった自分の心の穴を埋めるためにトレーニングや勉強をして必死にバレーから遠かった。
トレーニングをしているときは無心になれ1番何も考えずにいられるからと好きな時間だった。
時間を確認するとそろそろ早朝練のために身支度を整えなければいけないとトレーニングを切り上げた。
午前5時第二体育館へ行くとすでに二人は練習を始めていた。
「おはよう」
「おはよう!辻さん!」
朝からハイテンションの日向にあずさはげんなりとする。
「遅いぞ、あずさ!」
「そんなことないよ。時間通りだよ」
「おいおいおい!この天使ちゃんは誰だ!」
これまたハイテンションの坊主があずさの目の前に現れた。
誰だろうかとあずさは首を傾げる。
「2年1組田中龍之介です。以後お見知りおきを」
「あ、はい。辻あずさです。そこの独裁セッターに駆り出されて参りました」
「なんだよ独裁セッターって」
影山は”王様”ほどではないがその言葉に眉を顰めた。
「影山にピッタリじゃないか」
田中の言葉にムッとしつつも影山は
「時間がおしい。あずさボール出し頼む」
とコートへ戻っていった。
朝から何度も何度もレシーブを繰り返す日向にあずさは昨日と同じように声を掛けた。
「日向!こうだよ!こう!」
そう言って日向にレシーブでの構えをしてみせた。
「腕だけ取ろうとしないで、足はこう!」
「ウッス」