第1章 分かれ道
「失せろ。邪魔だ。」
シシアをきつく抱きしめる。
「は?」
「聞こえないのか?邪魔なんだ失せろ。」
「は?お前・・」
「寄せ、あいつ・・・」
一人の男が耳打ちをする。
男たちはブツブツ言いながら引き上げていく。
気持ちが悪い。
今まで無視して来た存在だというのに。
女であるという理由で遊ばれたのだ。
恐怖と怒りでぎゅっと手に力を入れる。
「おい?」
彼の手を握ったままだったことに気がついた。
「ご、ごめんなさい・・・・。」
「謝ってばかりだな。あと、誤解されるような動きをするな。だからあんな奴が寄ってくるんだ。」
呆れたように吐き捨てられる。
私が悪いのか。
ただ庭園に出ただけなのに。
ここで泣いてしまったらもっとめんどくさい女になってしまう。
「泣くなよ?」
そうぽんと頭に手を置かれると彼は会場に戻っていった。
名前は聞いていないがわかる。
「イザーク・ジュール。・・・」
挨拶回りに来た時、ちらりと見えた少女。
うつむき伏し目がちで哀愁が漂っていた。
姉のラクスよりも大人びているような達観しているように感じた。
バルコニーに飛び込んで来た時は驚いた。
それも男を連れて。
面倒くさいことをしてくれたものだ。
せっかく静かにしていたのに。
男を誘ったのかそうでないのか事実はわからない。
俺がいたため、怖がる演技をしたのかもしれない。
とにかく不愉快だった。
飲み直すために会場にドリンクを取りに行った。