第1章 分かれ道
「先ほどの子は?」
「急にバルコニーに入ってきたんだ。想像と違っていたな。」
「想像というのは?」
「ラクス・クラインの妹だよ。」
「あの?」
クルーゼの隣に来たのは黒髪の長髪の男だった。
「ラクス・クラインにはない気品と陰りのある少女だった。」
「気に入ったのかい?」
「まさか・・。利用できるかもしれないと思っただけだ。」
その言葉を悲しそうにデュランダルが受け止めた。
「このたびは婚約おめでとうございます。」
「ありがとうございますわ。」
ラクスと父の後ろにひっそりと佇む。
ラクスのように華やかではないけれど、その幸薄そうな不思議な魅力を感じるものも少なくなかった。
「お疲れ様、シシア。疲れただろう。あとは好きにしていいよ。」
パーティーが苦手だと思っている父は優しい言葉をかける。
「はい、お父様。」
返事をするとシシアは庭園へと向かった。
「あ、いたいた?」
数人の話し声が聞こえた。
「どうしたの?こんな暗いところで?誘われ待ち??」
数人の男が近く。
親切で話しかけられているわけではないとわかる。
思わず後ずさる。
「おい!」
面倒ごとになるのが嫌で急いで会場に戻る。
流石に会場で問題は起こさないだろう。
会場の扉を思いきっり開く。
そして人混みに紛れる。
早歩きでバルコニーの方へ逃げる。
扉を開けようとした時、手をおく前に扉が開いた。
「きゃっ」
扉に触れると思った手がそのまま支えもなく前に押し出される。
「すまない!」
転ぶと思ったが前にいた男性が受け止めてくれた。
「ご、ごめんなさい・・・・!」
動揺して動揺して態勢を立て直す前に離れようとして、またバランスを崩す。
「慌てるな。」
呆れたように男が声をかける。
「ほら、」
ゆっくりと起こされ自分の足で立つ。
「ごめんなさい・・。」
「いや、謝らなくていい。俺も・・。」
「おい、逃げんなよ?ああ、バルコニーで使用ってか?」
数人の男がシシアの後を追ってバルコニーに入ってくる。
「なんだよ、もう始めてんのか?」
シシアと男が向かい合い、お互いに手を取り合っていたため、勘違いしたのだろう。
その発言を聞いてシシアの体がこわばるのが触れている肌から伝わる。
小さく震えだしたのを見て大きなため息をつく。