第1章 分かれ道
「おやおや、まだ始まったばかりではないのかね?」
そこにはザフトの赤服をきた金髪の男が立っていた。
「失礼しました、先客がおるとは知らず・・。」
出て行こうとすると優しく手を取られた。
「いや、中にいたくないならここに入ればいい。」
それはまるで自分の居場所を認めてくれるようで心地よかった。
「あなたは・・・・?」
思わず口にしてしまい、はしたないことをしたとはっとする。
「私はラウ・ル・クルーゼだ。」
「クルーゼ様・・・。」
「そんな大層な人間ではない、ラウと読んでくれ。」
背が高く、整った顔立ち、急に自分がみずぼらしくなる。
「君は?」
優しく穏やかな口調だった。
「シシア・クラインと、もうします・・・。」
クラインの名がふさわしいと思ったことがなく、恥ずかしくなる。
「なるほど、君は母親似だな。」
「え?」
クライン家の一員には見えない、そう言われると思ったのに。
「お母様に・・・?」
「ああ、その静かな佇まい夫人を思い出す。」
身体的特徴は似ていないんだなと思いながら嬉しくて、不意に涙がこぼれそうになる。
そっと抱き寄せられ、背中を撫でられる。
「すまない、つらいことを思い出させたな。」
その手が暖かくて心地よかった。
なんと単純なのだろう。
はしたないと思いながらも、彼の胸でその暖かさにほだされた。
「あっ・・・。」
「どうした?」
「一緒に挨拶回ららないといけなくて・・・。」
ダンスのために演奏されえていた音が穏やかなものに変わる。
ここからはダンスと立食パーティーのようなものがごちゃ混ぜになる。
「それなら、一曲だけ私と踊ってくれないか?」
手の甲に優しくキスを落とされる。
男性に誘われたことが初めてでどきりとしてしまう。
「はい・・・。」
うつむきがちに返事すると、優しくてを腰に手を回されお互い見つめ合いながら踊り出した。