第7章 噛み合わない歯車
医療班に促され、急いでニコルの元に向かう。
「ア、アス・・ら、ン。」
人工呼吸器に繋がれ、苦しそうに言葉を紡ぐ。
アスランは駆け寄り、ニコルの手を握る。
「よ、かった・・。シシア・・は?」
必死に言葉を発するニコルに思わず涙が溢れだす。
「ごめ、ん、なさ・・い。シシア、た助けて・・、くれ、たのに・・。もう、無理み、たいで・・す・・」
ニコルが弱々しく笑う。
「そんなこと言うんじゃねぇ!気をしっかり持てよ!!」
ディアッカが怒鳴りつける。
「早く輸血しろ!」
「血が足りません!」
ニコルが助からないと判断し、シシアの手当に回る医療班。
「し、シシアは、たすかり、ますよ・・ね?」
彼の目から一筋の涙がこぼれた。
そこでイザークは気がついた。
ニコルの足がないことに。
泣きそうな顔でいつものように余裕のある顔を作る。
「あ、当たり前だ!!」
ニコルは穏やかに微笑む。
「僕・・。シシアの歌、を・・聞いたことが、あ、って・・。たま、たまクライン、邸に・・・い、行った時・・、聞いたんで、す・・・。か、彼女の、歌・・・。泣きそう、に、なるく、ら・・い感情、が・・・押し寄せてきて・・・。」
「もういい!!喋るな!!」
アスランが強く手を握る。
それでもニコルは続けた。
「それから、ぼ、く・・。気にな・・て・・。ぼくの・・ピア・・ノで、ぜひ・・歌って、欲しくて・・。」
アスランの涙は止まることなく溢れ出る。
イザークの目にも涙が流れた。
「実は・・。僕・・・好き、だったん・・です。で、でも・・いイザークが・・いたから・・・。伝えられ、な、くて・・。」
ゆっくりとニコルの視線が、シシアに注がれる。
シシアも人工呼吸器に繋がれていた。
「す、好き・・です・・・。」
ニコルは弱々しく微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。