第6章 地球へ
眠っている間に地球軍との戦闘が始まり、ガモフが落ちたと聞いた。
そしてイザークが怪我をしたまま出撃し、そのままディアッカと一緒に地球へ降りたらしい。
「君も地球に降りてもらう。」
シシアを呼びつけたにも関わらず、報告書を作っているようだ。
「ああ、すまない。何やら問題が多くてね、やっておかねば間に合わないのだよ。全く面倒なものだ。戦っていない連中に何が判断できるのかね。」
「お疲れ様です。ですが、なぜ私が地球に降りなければならないのですか?」
「我々があれを落とせなかったからだよ。」
「しかし、私の機体がありません。」
「人手不足のようでな、向こうに行けばある。出発は今日の14〇〇。」
それ以上会話を続ける気がないと言わんばかりに背を向ける。
シシアは黙って敬礼をし、仕方なく出発の準備を始めた。
「地球に降りるんですって?」
一人で無重力空間で漂っているとニコルがやってきた。
「ええ・・・。」
「そっか。地球は初めてですか?』
「ええ。ニコルは言ったことがあるの?」
「いいえ、言ったことはないです。だから少し行って見たいです。」
ニコルは愛おしそうに青い星を眺める。
シシアは視線を地球へと戻す。
「もう・・。行かなきゃ。」
「はい、気をつけてくださいね。」
ニコルは手を差し出す。
戸惑いながらシシアはその手を握り返した。
ニコルが眩しい笑みを浮かべる。
「行ってらっしゃい。」
自然と笑みがこぼれた。
「ええ、行ってきます。」
ニコルはシシアが見えなくなるまでずっと見ていた。
「ダメだな・・。彼女にはイザークがいるのに・・。」
いつから惹かれたのだろうか。
いや、知っている。
彼女の凜とした佇まいに興味を持ちアカデミーの初日話しかけた。
彼女の声は雑味がなく、ピアノの音のように心地がよかった。
「いつか、気持ちだけでも伝えれたらいいな・・・。」
ニコルは一人でつぶやいた。