第5章 崩れる均衡
宇宙服を渡され大人しく着る。
「じゃあ行こうか」
彼の手を取った時、やはりクルーゼに触れたような既視感を感じた。
「ほう、シシアを返還。」
「隊長・・・・。」
「このまま私が行く。」
ラクスのように丁寧ではなく、シシアは宇宙空間に放置され、それをクルーゼが拾い連れ帰った。
「た、隊長・・・。」
一気に緊張の糸が途切れた。
「よく頑張った。」
クルーゼ自ら宇宙服を脱がせ、医務室に連れて行く。
「ひどいな。ちゃんと手当してもらわなかったのか?」
「いいえ、少し動いたから・・・・。」
言葉が取り作れないほど疲弊していた。
「何にせよ、無事でよかった。あとは頼む。」
行かないで言いたい気持ちを抑える。
だんだんとまぶたが重くなり、自然と目を閉じ眠りに落ちる。
「・・・・は手当・・・もらえなか・・っ・・_。」
誰かの会話でメガさめる。
「イザーク・・・?」
無意識に彼の名前を呼んでしまった。
「シシア!目が覚めましたの!!」
ラクスが心配そうに手を握る。
側にはアスランが立っていた。
「ラクス・・・・。怪我は・・?」
「ありませんわ。」
「そう・・。」
そしてまた目を瞑る。
頭痛がひどい。
「私、もうプラントに戻らなければなりませんの・・・。シシアも戻りませんか?」
ちらりと明日アスランを見ると首を横に振っていた。
「ラクス・・・。私はザフトなの。民間人じゃないから帰れないわ。」
「ラクス、もうそろそろ時間です。」
アスランが遮る。
「でも・・。」
「いいから、帰って。」
ラクスは寂しそうに笑うとアスランとともに医務室を出て行った。
しばらくするとアスランが戻って来た。
「アスラン・・。私聞いたの。ストライクのパイロットって・・。」
「すまない・・・。」
カマをかけてみたがあたったようだ。
一度食事を運んでくれたキラという少年が漏らしたアスランの名。
「あいつは・・・。騙されてるんだ・・。すごい力を持っているから・・・。」
ベットから腕を取り出し、彼の手を握る。
「大丈夫よ・・。私が代わりにやるから。」
「シシア!?」
「いずれ大きな問題が起きるわ。あなたは本気で戦えないでしょうし。」