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世界は変わらないと知っていても

第1章 分かれ道


「お母様、お母様ぁ!」

母に棺にすがりラクスが泣きじゃくる。

「本当に惜しい人を亡くしたわね・・・」
「かわいそうに・・・。」
「それに比べて妹の方はなきもしないわ・・。」

こんな日まで何か言われるのか。
胸が苦しくなる。

母が亡くなった。
長くはないと知っていたけれど。
別れは突然だった。

「ラクス・・・。」

「お父様!!お母様が・・・。」

父に抱きつき、より一層激しく泣く。
私は抱きしめてくれないのか、そんなことを考えてしまう。
どこまでも自分中心の考えに呆れる。
母が亡くなったというのに。

亡くなった?
死んだ?
だめ、パニックになってしまう。
怖い、助けて・・・。
アスラン!

そう思って顔を上げた時、アスランとその父親らしき人が父とラクスの元にいた。

理解した。
もう、私は一人だ。
アスランも幻想だったのだ。

アスランが悲しそうな表情でラクスの背中をさするのを見て、屋敷を飛び出した。


プラントの雨に打たれている間に母の葬儀は終わった。
そして実の母の葬儀に参加しなかった常識はずれの娘という噂が広まった。

母が亡くなり、そして淡い恋も終わった。
そして屋敷に引きこもる生活がはじまる。


クライン邸に行くと聞いて子供ながらに緊張した。
ピンク色の可愛らしい娘と辛気臭いくらい娘がいると友人が言っていた。
実際あったラクスは確かに可愛らしかった。
つい頬を染めてしまう。
しかし、双子の妹も可愛らしい少女だった。
濃い紺の髪色。
自分と似ているからか親近感がわく。
しかし陽に照らされた彼女の髪は艶やかでまるでサファイヤのようだった。
人を不安にさせるという金の瞳も神秘的だと感じた。
大人びていた彼女だが話して見ると年相応の女の子だった。
初めは自分の噂のせいでおずおずとしていたものの、だんだん打ち解けてくると笑顔をよく見せてくれるようになった。
可愛いと素直に思った。
だがラクスにも憧れのような気持ちを抱き始めていた。
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