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世界は変わらないと知っていても

第1章 分かれ道


母の代わりにパーティーのコンセプトや料理、飾り付けを決め、手配させる。
当日は表へは出ず、温室の端っこで座っていた。

「どうしたの?」

それがアスランとの初めての出会いだった。
親についてきた子供がふざけて水をかけてきたのだ。
階段から突き落とされ、膝も擦りむいていた。
母に心配されたくなくて隠れていたのだ。

「びしょ濡れじゃないか!?待ってて、タオルもらってくる!」

「ダメ!!」

とっさに彼の手を掴んだ。

「お母様に心配をかけたくないの・・。」

男の子は困ったような顔をする。

「わかった、これで少しふいて?」

男の子がハンカチを取り出す。
家族以外からの優しさに慣れていないため警戒する。

「もう、ほら・・。」

呆れたように近ずき、髪の毛から滴る水をふいてくれる。
そのまま顔や手など肌の水滴も拭ってくれた。

「どうして・・・。助けてくれるの?」

「どうしてこんなずぶ濡れな子をほっておけるんだ。」

思いがけない言葉に戸惑う。
今までの人は無視してきたからだ。

「あ、ありがとう・・・。」

「ほら、絞ったらまだ拭けるから。」

ハンカチを絞るとまたシシアの雫月ている部分をふく。

「アスラン・ザラ。君は?」

「シ、シシア・クライン・・・・。」

よろしくと笑いながらアスランが手を差し出す。
おずおずと手を差し伸べると、やさしく握り返される。

胸が高鳴るのは仕方がない。
だって、こんなにも優しくされたことはないのだから。
単純だって思われても仕方ない。
でもこれが初恋だったんだと思う。

どうしても断れないパーティーに行くときは彼を探した。
私の噂なんて知らないようだ。

「実はずっと月にいたからあんまりプラントに知り合いがいないんだ。」

「そうなんだ。そう・・・。だから・・・。」

「えっ?」

「ううん、なんでもないの。それよりもー」

アスランといる時だけ、気持ちが楽だった。
気を使わなくていいから。

「今度・・・。映画でも行かない?」

アスランが恥ずかしそうにこちらを見る。

「外・・・・。うん・・。」

彼とだったらいける気がする。

しかし、初々しい恋は叶うことがなかった。
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