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世界は変わらないと知っていても

第3章 ザフトへ


「見せてみろ。」

まさか隊長自ら手当てすると思っていなかったため戸惑う。
だが、抵抗して無駄だと、おとなしく足を差し出す。
まるで脆いものを扱うかのようにそっと触れる。
恥ずかしくて俯く。

「その仮面は・・・。お怪我を?」

出会った頃はしていなかった仮面。

「ああ、私の嫌いな人に似てくるのでな。」

そう独白すると仮面を外す。

「覚えていたのだな。」

彼の金髪がさらりと揺れる。

「わざと、弱いふりをしているな。」

彼の言葉に体がピクリと反応する。

「私の隊に来い。」

「え・・・?」

「私が最大限に君の才能を開花させてあげれる。」

彼の手が伸びてくる。

「大丈夫だ。何も、怖くない。」

優しくシシアの頬撫でる。

「私がクライン家だから、引き込もうと・・・?」

「家は関係ない。君が欲しい。」

まっすぐな瞳を向けられる。
何か裏があるとわかっているのに、その言葉に心が揺れる。
クライン家ではなく、私。
できのいい姉ではなく、私。

「受け入れてくれるかね?」

まるでプロポーズするかのようにひざまずき、手をとる。

「クルーゼ隊長・・・。」

彼の元なら、居場所ができるかもしれない。

彼の手を強く握る。
それが答えだ。



「教官。・・。」

「君がクルーゼ隊長から引き抜かれるとは。さぞ楽しい時間を提供したのだろう。」

まるで汚いものでもみるかのような視線を向けられる。

「そう言うわけでは・・・・。」

「それ以外何がある?」

確かにそうかもしれない。
成績も残していない。
何かずば抜けたものがあるわけではない。

「もういい、いけ。」

失礼しますと挨拶をして部屋を出る。
気のせいかもしれないが、周りの視線が痛い。

「クルーゼ隊長と寝たって。」
「さすが・・・!」
「お姉さんが歌姫ですもんね」
「ベットの上ではすごいみたいだな。」
「本当、大人しそうなのに」

「やっぱりそうやって男を引き入れるのが上手いみたいね。」

ザフトの入ったばかりの頃に絡んできた女だ。

「やっと本性を現したみたいね。」

シシアはいわれのない噂に対する耐性ができていた。
生まれた時から言われてきたのだから。
無視して部屋に向かう。

「だから!そういう態度が生意気なのよ!!!」
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