第3章 ザフトへ
その音を聞いた女たちはそそくさと立ち去っていった。
髪の毛が散らばり、髪飾りが壊された彼女をみて流石にかわいそうだと思った。
「大丈夫か?」
どう声をかけていいのかわからなくて、当たり障りのないことを言ってしまう。
壊れたバレッタを震える手で拾い集める。
「大切なものなのか?」
彼女は頷いた。
「そうか・・・・・。」
彼女が今にも壊れてしまいそうで、つい抱きしめてしまう。
「部屋に行こう・・・。」
ディアッカがいないためイザークは自室へ連れて行く。
彼女は虚ろな瞳で壊れたバレッタを見つめていた。
「ほら、のめ。」
イザークが気を使いコーヒーを入れる。
「・・・・薄いわ・・・。」
「黙って飲め!!いらんなら飲むな!!」
顔を真っ赤にさせて怒る。
それをみてクスクスと彼女が笑い出す。
ほっとしたものの、彼女の笑いはどこか不安にさせた。
「シシア??」
クスクスと笑う彼女の瞳がうるむ。
イザークはギョッとする。
だから女は嫌なのだ。
「だ、大丈夫か?」
「私が何をしたというの・・・・。なぜ誰も放っておいてくれないの・・。」
ズキンと胸が痛む。
あの日も男に絡まれていた。
ラクスという姉がいるせいで、目立たない彼女が標的にされるのだ。
「ああ、ああ。そうだな。」
イザークは彼女の背中を優しくさする。
落ち着いた彼女を街に連れ出し、バレッタの修理を宝飾屋さんに頼み、バラバラになってしまった髪を綺麗に切りそろえた。
おろした時、腰まであった髪の毛は肩口で切りそろえられた。
「こんな感じになりました。」
宝飾屋の店主から直してもらったバレッタを見せてもらう。
「これは昔、レノア様が注文されたものでは?」
「え?でも、似合いそうだと思ったって・・。どこかで購入したものだと思います。」
「いや、ここで注文したものですよ。思い出しました。とっても可愛い娘ができたと嬉しそうにしておられました。」
娘・・・・・。
「レノア様は元気ですか?」
その質問に微笑みで返す。
「レノア・・・って、アスラ・ンザラの母親の・・・?」
エレカを運転しながらイザークが横目でシシアをみる。
「ええ・・・・。」
「そうか・・・。」
二人の間に沈黙が流れた。