第2章 母の思いで
「目を閉じても光がわかるように あなたがいなくても愛を感じています 私に幸福と名付けてくれた人 もう帰れない場所にいるのに 遠い 遠い
愛しさは消えて 私に寂しさだけを残す 永遠はないと知っていてもすがりたくなる
会いたいと願えば 夢に出てきてくれるのでしょうか
何もかも放り出して あなたの元にかけていきたい
忘れるなんてできない それでも忘れてしまうのでしょうか
小さな命が芽吹くたび私は過去に取り残される 暖かすぎるこの場所は 私には似合わないでしょう 小さな歪みに小さな衝撃を
深く 深く
命は儚いものだという・・・・・」
しっとりと彼女が歌い出す。
感情がこもっていないように淡々と歌う。
なのに、どこか切なくて寂しくて。
彼女の心の傷の深さを感じた。
「アスラン・・・・。」
「さっきの曲、すごくその、良かった。」
「ふふふ、いつもラクスのコンサート寝てるって聞いてるよ。」
プラントに光る偽物の月。
その光が彼女を照らす。
「シシア・・・・。」
アスランが歩み寄る。
ラクスが太陽であるならば、彼女は月だろう。
「なあに?」
レノアのそばに来てから彼女の雰囲気は柔らかくなった。
そして笑顔が増えた。
「冷えるから中に戻ろう。」
彼女に手を差し出すと困ったように笑う。
「そういうことはラクスにしてあげて。」
アスランの手を取らず、彼女は室内に戻って行った。
楽しかったレノアとの暮らしも今日が最終日。
なんだか胸のざわつきが治らない。
「レノアさん・・・。一緒にプラントに戻らない?」
「ちょっと立て込んでるんのよね、研究がね。」
「なんだかざわざわするの、一緒に帰りましょう。」
「そう言ってもね・・・。ごめんね今ちょっと手が離せないの。ちょっと大詰めだからね。」
「シシア、そろそろ行かないとシャトルが出ちゃう。」
「レノアさん・・・。」
「どうしたの?この研究がひと段落したらすぐ行くから。」
まるで駄々をこねているかのようにたしなめられる。
でも、この感じ、既視感がある。
それは母がなくなる前に感じたざわつきと似ている。
「シシア、愛してるわ。またね。」
この抱擁が彼女との最後の思い出になった。