第10章 本編 第17章 海の見える丘に咲くミモザの木の下で君と
「……許可を出す前に、お前にもう1つ尋ねたい」
「……何でしょう?」
「……お前は先日、中島の時同様に社員に相応しい者が居る故に此処へ招きたい、そう私に具申してきた」
福沢の言葉に太宰は頷いた、それを確認した彼は言葉を紡いだ
「そして、翌日ーー徳冨が探偵社を訪れた
……後日、徳冨から話を聞いたが、徳冨が此処へ来た理由は"差出人が不明である手紙を見た"故だ、と言っていた
ーー"お前ではないのか、太宰"」
福沢は暫しの間を経て、目前にいる太宰へと視線を向けた
「お前が徳冨を此処へ来る様、手引きしたのではないのか」
何処か確信を得た瞳で太宰を見つめ返す、それはまるで、全てを見透かしているような鋭いもので、彼までも射ぬいていた
しかし、太宰は黙り込んだまま、福沢は言葉を紡いだ
「……お前は、何処まであの者ーー徳冨についてを知っていた、
ーー真逆、」
「社長、」
確信へ迫ろうとしていた福沢の言葉を遮る様に太宰は彼を呼んだ
「買い被りですよ、私は万能ではありません……人間の全てを知ること程、難解なものはありませんから」
太宰は福沢に向かって微笑んだ
しかし、それは見知った誰かを彷彿とさせる物言いや笑みで福沢は思わず太宰を見つめ続けた
「……この答えでは御納得頂けませんか、」
「……否、そうではない……気にするな、」
福沢は咳払いをし、考えを欠き消すと改めて太宰と向き直った