第10章 本編 第17章 海の見える丘に咲くミモザの木の下で君と
「……徳冨を探偵社員に推薦する件については了承した」
但し、と言葉を切った福沢は言葉を紡いだ
「徳冨が己の意志で探偵社に留まる事を選択した場合に限る
徳冨が拒むようなら、潔く身を引け……善いな、」
福沢の言葉に太宰は微笑みを浮かべた
「はい、ありがとうございます」
胸に手を添えて頭を下げた太宰は一歩足を引いた
「……では、報告は終わりましたので、私はこれで失礼します」
「嗚呼、」
一礼して、踵を返す太宰の後ろ姿に福沢は言葉を投げ掛けた
「先刻も言ったが、徳冨は未だ寝かせておけ……」
その言葉に足を止めた太宰は徐に言葉を紡いだ
「心配しないで下さい、社長、私が行くのは別の処ですから」
「……そうか、」
「えぇ、」
福沢の方へと振り返った太宰は小さく微笑むと言葉を続けた
「"世界で一番心優しい友の処へ"ーー行くだけですから」
その言葉と共に太宰は再び一礼すると社長室を後にした