第9章 本編 第16章 文豪ストレイドッグ
ーー黄昏の刻限、
それは闇の世界が始まる前兆……
その時、織田は子供達の部屋に残されていた地図が指し示していた場所でミミックの長ーージイドと銃を交えていた
互いの過去の話をしながら、今までの生き方についてをーー
それは命を賭けて、交える者同士だから話し合えた互いの本音であった
そして、織田は言った
「1つ、いや、2つ……心残りがある……
友にさよならを言っていない、そして、彼の幸せを最後まで見届けられなかった事だ」
「彼……?」
織田の言葉に反応を示したジイドは彼に銃を向けながら問う
「あんたと交えた時に俺の傍に居た者だ」
鋭い視線で見つめる織田の言葉にジイドは直ぐに思い出した
彼を傷付け、怒りに震えていた小さな彼の姿をーー
「嗚呼、確かに居たな……」
「……彼は俺が生涯で唯一持った相棒だ、」
織田は在りし日の記憶が自然と頭を過った
「幼少期に親に捨てられ、孤児となった、貧民街で明日も見えない日々の中で、懸命に仲間と生きていた……しかし、ある日……その仲間も悪人に殺されたらしい
そして、彼はまた、1人となったーー」
苦しそうに小さく呻き、絶望にうちひしがれている……今にも命の灯火が消えそうな、小さな背が昨日の事のように織田の頭に蘇る
「何度も居場所を失い……ずっと1人で生きてきて、心細かっただろう……だから、彼にはこの世界で幸せになってほしい、いや……ならなければならない」
そして、また織田の頭に蘇るのは唯一と言っても善い……かつて"徳冨と自身を伸した武道の達人"ーー
その姿を思い出して、織田は小さく笑みを浮かべる
「彼ならば、きっとなれる……なれるさ、
もう、俺が居なくても……蘆花は幸せになれる
俺はそう、信じてるーー」
その言葉と共に織田は、ジイドは引き金を引いた
銃声が、2発……この場に轟いた
互いに、見つめ合ったままだーー