第7章 本編 第14章 戻れない場所
「1人でも生き残っていれば、敵の本拠地、敵の目的、次の標的、指揮官の素性と名前、そして、組織を統率する異能力、貴重な情報が引き出せたろうに、全く善くやったよ」
「情報などーー連中如き、僕が纏めて八裂きに」
しかし、芥川の声が最後まで言われる事なかった
何故ならば、突如として芥川の顔を殴りつけたからだ
突如の太宰の攻撃に防御等無に等しい芥川は吹き飛び、床の石畳に頭部をぶつけ、跳ねると鈍い音を立てた
何とか体制を整えた芥川は呻き声を上げながら太宰へと視線を向ける
「きっと、君は私が言い訳を求めている様に見えたのだろう……誤解させて悪かったね」
血を吐き出す芥川に構わず太宰は部下に声を掛けた
「君、銃を貸して」
部下が戸惑いながらも命に従い、太宰に拳銃を渡すと何の迷いもなく銃口を芥川に向ける
「私の友人に孤児を個人的に扶養している男達が居てね、芥川君……貧民街で餓死寸前だった君を拾ったのが織田作と蘆花ちゃんだったら、きっと君を見捨てず、辛抱強く教え、導いただろうーーそれが"正しさ"だ」
咳き込む芥川に太宰は語りかける様に言葉を紡いだ
「……けど、私は"正しさ"の方から嫌われた男だ」
太宰は何処か儚げな視線を芥川から逸らすと言葉を続ける
「そう言う男はねえ……使えない部下をこうするんだ」
言い終えた直後、太宰は容赦無く指に手を掛け、引き金を引いた
3発の銃声がこの場に轟き、閃光が眩く光る
「……へぇ、やれば出来るじゃないか」
芥川の額に、汗が滑り落ちる
太宰が放った弾丸は芥川の手前で何とか静止していた
ーー芥川の異能力、"羅生門"だ
しかし、異能力で銃弾から身を守った芥川の表情に余裕は無く荒い息を立てる