第5章 本編 第12章 たえまなく過去へ押し戻されながら
「私も乱歩さんと同じくこの資料が根拠です、そして、これを踏まえて注目すべき点と考えなければならない点は健次郎君の強さです……組合がどこまで健次郎君について調べたのかは判りませんが、彼の強さは本物です……銃の腕は勿論、異能力も使いこなしている」
大宰は断言するように、力強く言葉を紡いだ
「健次郎君が本気になれば、上級秘書官や異能空間の能力者に勝つなど、わけはありません……しかし、組合の長ーーフィッツジェラルドとなると……話は別です」
太宰は小春が纏めた資料を手にし、指し示すと共に言葉を紡いだ
「小春ちゃんが纏めてくれたこの資料によると彼の能力は金で身体能力を上げる異能力、ここで着目すべき点は組合の強みです、それは何と言っても資金力……相手の力を推し量り、出し惜しみせず、彼が自分に投資すれば、攻撃の威力は桁違いです……流石の健次郎君でも勝てない」
太宰は指し示した資料から顔を上げる
「……健次郎君は本来、誰かと組み、戦う事で最も力を発揮します、援護することにおいて、右に出る者は居ません……共に戦えば安心して背中を預けられる程に、ね……」
そう告げる太宰の顔は何処か浮かない顔をしていた、しかし、それも一瞬で、直ぐに表情を戻すと再び、力強く言葉を続けた
「私は共に戦うという点において、これほど心強い人間を、他に知りません」
断言する太宰を全員が見つめる中、先刻から沈黙していた国木田が徐に言葉を発した
「……確かにそうかもしれん……だが、太宰、」
国木田は真剣な眼差しで太宰の方へと視線を向けると言葉を紡いだ
「何故、お前がそこまで徳冨を推す? ……彼奴は、元々お前の事を……」
「国木田君、」
太宰の擁護に違和感を抱いたのか、国木田が追求しようとするが、それを咎めるように彼は国木田へ視線を向ける
「……君も健次郎君の強さは知っているだろう? 彼と共に戦ったことのある……君ならば……ね、」
太宰の言葉には国木田にも心当たりがあるのか、それ以上の言葉は出ず、沈黙し、顔を俯かせる彼に太宰は言葉を紡いだ
「……私はただ、事実を述べている……それだけの事だよ、他意は無いさ」
大宰は小さく、少し寂しそうに笑みを浮かべて言葉を発した、しかし、先刻と同じく直ぐに表情を戻したが、その表情は先刻よりも厳しい