第5章 本編 第12章 たえまなく過去へ押し戻されながら
小春が会議室の前へ着いた時には既に複数人の声が聞こえていた、彼女は扉を幾度か叩いて入室した
「……失礼、します……遅れて、ごめんなさい……」
「善い、其処へ」
「小春、纏めた資料を社長達にお配りしろ」
小春は福沢に指し示された席へ着くと国木田に資料を催促され、彼女は頷くと共に纏めた資料を配る
「この資料は、昨日……国木田さんに頼まれ、纏めたものです……探偵社に訪れた組合の、顔、名前、異能力を調べました……」
小春は資料の一番上を指し示し、言葉を紡いだ
「まず、組合の長ーーフランシス・スコット・キー・フィッツジェラルド……
異能力は、華麗なるフィッツジェラルド……
消費した金額に応じて、身体能力を強化、出来ます……他人に、及ぼす効果はなく、自身のみ有効とされています……資金力に優れている組合ならば、優位に立てる能力だと思われます」
フィッツジェラルドの資料を読み終えた小春は頁を捲り、次の人物を指し示す
「……そして、社長さんとお話しされている際に、右後ろに控えていた女性……ルーシー・モード・モンゴメリ
異能力は、深淵の赤毛のアン……
先刻、江戸川さんが仰っていた、異能空間を作る能力です……詳細は、記されていませんでしたが……」
しかし、その言葉を最後に小春は何処か歯切れ悪く呟くと、気まずそうに顔を伏せた
「どうした、」
「……実は……1つ、不可解なことが……」
「不可解な事、とは……何だ、小春」
小春の言動に違和感を覚えた国木田は彼女を促すと暫しの後に言葉を紡いだ
「……今回の組合について、調べている時……報道にも、あったように……"忽然と姿を消した"、という記事を見たんです」
「……何が、消えたんだ、」
小さく呟く小春に国木田は思わず息を呑むと彼女を促した
「……"人"です……それも、数十人の規模で」
小春の言葉にこの場に居る者達の多くは眉を潜め、厳しい顔を浮かべた
「……その犯人は、未だ見つかっていません……しかし、この件の目撃者が、掲載していた情報には……"彼女と思わしき特徴"が記されていました」
「……矢張、乱歩さんの見立て通り、今回の件に関係していると見て間違いなさそうだねぇ……」
「……嗚呼、その様だな」
小春の情報に確信を得た大宰は小さく頷き、国木田も彼に同意する中、彼女は更に頁を捲り、最後の人物を指し示した