第4章 体育祭、それぞれの準備
「……(“ザコ” “モブ”、かぁ)」
ズキッ
爆豪が発した言葉にアザミの胸が密かに痛む。
(だって私は――――…、)
間違いなく
かっちゃんにとっての、そっち
―――“ザコ、モブ”側だから。
「…ッ」
分不相応だ
1-Aの敷居を当然に跨ぎ、緑谷や爆豪と当たり前のように一緒に居る事が、そのように感じた。
目の前に居る爆豪が、どんどん遠ざかっていくようだ。
親しみのある幼馴染が自分とは異なる高貴な存在に見え、傍に居ることすら居た堪れなくなる。
「!おい、アザミ?」
恥ずかしい
かっちゃんの隣に立つ資格なんて。
ザコモブの私には、無い。
「…っ」
アザミは無意識に爆豪から離れ、足を一歩下げたその時、
「どんなもんかと見に来たが、ずいぶん偉そうだなぁ」
ヌッ…
紫色の立った髪で、爆豪より背の高い男子生徒が姿を現した。
そして爆豪に向って手を伸ばす―――
「ああ!?」
グイッ
「―――えっ?」
―――の、ではなく。
爆豪の背後に居るアザミの手を取り、そ…っと1-Aの教室の出入り口である境界線を跨がせた。
紫色の髪で、濃い隈が特徴的で
気怠げでどことなく影がある男子生徒は―――、
「心操、くん…?」
―――雄英高校1-C、心操人使だった。
「ヒーロー科に在籍する奴は、皆こんななのかい?」
「テメェ…!!!アザミにッ、」
「彼女の顔、見た?」
「あァ"?!!」
「君の言葉で傷ついてたよ」
「は?何言って…!!」
爆豪がアザミを見やると、少し気まずそうにハハハと苦笑いをし、ふいっと目を逸らされてしまった。
「!、…ンでッ」
「…こういうの見ちゃうと、ちょっと幻滅するなぁ」
「はぁ"!?」
心操は頭を掻きながらアザミを庇うようにズイッと爆豪との距離を縮める。
「し、心操くん!私は別に…」
傷ついてないよ、と言い―――
「じゃあ、それ
俺の目見て、言えます?」
「!、…」
心操の目は「それが答えでしょ」と言わんばかりだ。
彼は何も言えなくなってしまったアザミに返事を追求せず、掴んだ手を優しく離した。