第6章 体育祭、それぞれの想い
《乗り時間僅かだァァアーーーッ!》
竜巻を起こした生徒を見ると、決勝戦への見込みがあるくらいハチマキを獲得しているようだ。このまま逃げ切りたいのだろう。
このままでは竜巻に掻き回され、騎馬戦が終わる。
これで終わっていいのか?
いつもの俺だったら諦めているだろう。
去年も、一昨年も。人に見られているかもしれないと思うだけで動けなくなってしまう。
「天喰くん…!!!」
「猫柳さん!」
竜巻の中で運良く猫柳さんと距離が縮まるも、手が届くことはなかった。
「天喰くん、大丈夫だから!」
「?!」
「ッ私!絶対に地面に落ちないからぁ…!!」
心配しないでー!!
そう叫びながら風に流される猫柳さん。彼女があんなに頑張ってくれているのに、俺は本当にこのままでいいのか?
せっかく猫柳さんが俺と騎馬を組んでくれたのに。このまま猫柳さんに任せて、竜巻に翻弄されて終わるなんて…
「このままで、良いわけがない…!」
君の頑張りに、俺は答える義務がある!!
「――――混成、大夥ッ!!」
俺は個性の“再現”のために、いつも食べるようにしている食材がいくつかある。
《おおおっとー!?!
あの竜巻の中から抜け出した生徒は―――天喰環だ!!大きな翼で飛び出したァァァ!!まるであのヒーロー、ホークスを連想させる翼と跳躍力だ!!!》
竜巻から抜け出せる体を形成する。
「竜巻を止めろ!!!」
竜巻を繰り出す生徒に向う。
もちろん、相手も簡単に倒されてはくれない。
「混成大夥ッ!」
俺が竜巻から脱出したことで相手が動揺し、僅かな隙が生まれた。そこを見逃さず、タコ足を再現し騎手を突き飛ばす。相手の体勢が崩れ竜巻がピタリと止んだ。
その瞬間、俺は他の生徒達から一斉攻撃に見舞われる。
「待てよ天喰!!」
「残念ながら、俺はハチマキを持っていないぞ」
「騎手が天喰んとこに戻れなきゃ、失格になるだろ!ライバルは少ない方が良いからな!」
「くっ」
竜巻を止めることは出来たが、ここぞとばかり狙って攻撃を受けて身動きが取れない。一刻も早く猫柳さんと合流しなければいけないのに…!!