第4章 体育祭、それぞれの準備
「まずは、ハイっ!切島くん!」
「俺ッスか?」
突如名前を呼ばれた切島は頭にはてなマークを浮かべながらアザミの側に寄る。
「この間、お金借りたでしょう?ありがとね!」
「別に良いッスよ!」
「良くない!お金のことはちゃんとしないと駄目だよ!……………あれ?」
アザミはペタペタと制服に存在するポケットという名の部分を全て探る。
「………ごめん、教室に置いてきちゃった」
「まじっすか」
「…アザミ、お前何しに来てんだ?」
「まだ!まだ用事あるから!
はい、かっちゃん!」
アザミは爆豪に向って片手を付き出す。
「は?」
「家庭科の教科書、貸して」
「持ってねーわ」
「え?五教科外って置き勉してるでしょ?」
先生達も五教科外…音楽、美術、体育、家庭科の教科は予習復習を課さないため、置き勉を暗黙の了解としている。
「してねーよ」
「真面目かっ!!!」
「当たり前ェだろーが」
「明日家庭科1限なのにー!」
「ハッ、テメェで取りに来いや」
「えぇ〜」
駄々をこねるアザミを無視し、「くだんねェ、帰る」と歩き出した爆豪。「私も予定あるんだった!」と慌ててアザミも彼に続こうとした。
「アザミちゃん、僕の使う?」
「デ…デクくーんっ!!!」
「家庭科、来週だから急いで返さなくていいよ」
「あ…ありがとう〜っ!!
優しい!流石デクくん!救世主!」
緑谷から受け取ろうとしたその時。
「デェェェク…!!!」
「ヒッ」
「余計な事すんじゃねェー!!」
爆豪に物凄い剣幕で威嚇された緑谷はアザミに教科書を差し出していた手を思わず引っ込めてしまった。アザミはスカッと受取損ねる。
アザミが受取る隙すら与える間もなく「早く帰るんじゃねーんか?!あァ"?!!」と教室中に響き渡る怒声をあげる。
(((((爆豪……
それって独占欲なのでは…?)))))
クラスメート達は密かに察し、ほっこりする者もいた。
しかし幼馴染3人組は「かっちゃん!!何するんだよ?!」「うっせェ!!!!」「ちょ、離しなさいってば!」と謎の修羅場になりかけた。
「何ごとだぁ!!!?」