第4章 体育祭、それぞれの準備
「…だからそうゆうわけでこの気持ちが成り立つのであって他意はなく慕っている親しみからであって……」
1-Aの教室の、黒板に向って緑谷はブツブツと1人呟きを繰り広げている。はっきり言って異様な光景だ。
彼のブツブツも1-Aの皆見慣れてきたため、彼の呟く内容について誰も気に留めない。
幼馴染のアザミにしてみたら、彼のブツブツをスルーするのはなんてことない。
「大丈夫!デクくんのことはそっとしておこう!」
「そ、そうやね?」
アザミはお茶子を中心に1-A女子達を彼から遠ざけるように「さあ、行こ行こ!」と彼女達の背を押した。
「あ!アザミちゃん、知っとる?
雄英の敷地内に猫がいること!」
「………うん、知ってるよ!」
「先日、相澤先生が猫用オヤツを差し上げていらっしゃったのを見かけましたわ」
「いーなー!私もあげたーい!」
アザミは麗日、八百万、芦戸達と当たり前のように和気あいあいと放課後の談笑を楽しむ。
その光景を少し離れた場所で切島と上鳴が見ていた。
「アザミさん、あっという間にうちのクラスの女子と仲良くなったな!」
「つーか。アザミ姐さんってば、俺等より女子達との方が仲良しじゃね?な、爆豪」
「あ"?知ったこっちゃねーよ!!」
爆豪の目が釣り上がっていく。
掌からいつでも爆破を出せる臨戦態勢を上鳴に向ける。
「爆豪と緑谷め…ッ!!!
少なくとも緑谷はオイラと同じ部類の人間だと思ってたのに!!!
こぉぉぉんな可愛い先輩と幼馴染だと…ッ?!ふざけんなよ、夫婦漫才かよ!!!」
「いや、夫婦漫才じゃねーだろ」
「3人だもの。むしろ漫才だわ、ケロ」
「誰が夫婦漫才だゴラァ!!
漫才でもねンだわッッ!!!!」
クラスメートの峯田、瀬呂、蛙吹に爆豪は今にも爆破を起こしそうな勢いでコメントをする。
「かっちゃん!そんなカリカリしない!」
「誰のせいだと思ってンだ?あ"ァ"?!」
「私はね!ちゃんと用事があって1-Aに来たの!」
「はぁ"?」
あんなに怒鳴り散らしていた爆豪だが、アザミ相手になると段々落ち着いていく彼の様子を見たクラスメート達は「アザミの言うことには比較的素直なんだなあ」と胸の内だけで呟いた。