第3章 《僕》のオリジン
(アザミちゃん、泣いてる―――?
いやいや、まさか……でも、僕の事を……)
「そんな風に、思っててくれたの…ッ?」
ずっと応援しててくれたなんて。
嬉しくないわけがなかった。
「でも、違ったんだよね
“ガンバレ”って、言っていいんだよね」
「!…、う、うん…!」
するとアザミはすーはーと深呼吸を何度か繰り返し、暗い海に向かって叫び始めた。
「すぅー……っ
デクくん見てるとぉおーーっ!!
応援したくなるっ、のぉおーーーっ!!!」
「わ…?!ビックリした!!」
「デクくんはっ!
“ガンバレ”って、感じなのぉおーーー!!
見てるこっちも、“頑張ろ!”って、思えるのーー!!!」
「な、なんだよ、それ…っ」
こんな風に誰かに一生懸命応援されたことがあるだろうか。ましてやずっと秘めていた胸の内を告白するような、こんな熱い応援を……
緑谷の止まりかけていた涙腺が再び緩み出す。
「頑張ってるデクくん、はぁあーーっ!!
ちょっとだけ、カコイイーーー!!!」
「〜〜んなッ!?」
アザミちゃんは何を…一体何を言ってんだ?!!と、緑谷は赤面しパニクりかける。しかし、精いっぱい声を張り上げてくれる彼女に再び視線を戻せば、そんな思考は一瞬で消え去ってしまった。
「これからはぁぁーーっ!!!
たくさん言うからねぇえーーっ!!!」
一際大きな声でエールを送る彼女は。
街灯もない夜の浜辺にいるはずなのに、眩しくて。とてもとても眩しくて、目が離せなかった。
「デクくぅーーーーんっ!!!
ガンバレェエーーーーっ!!!!!」
アザミの一際大きな声は暗い海に吸い込まれ、し……ん、とその場が静まり返る。のも、つかの間。
「うっ………う、
アザミちゃん………ありがとぉおッ」
「はぁ…はぁ…、へへっ!
こちらこそ、ありがとうだよっ」
アザミは「あぁースッキリした!」と体を猫のようにググっと伸ばした。
(どうしよう、涙が止まらない…っ)
止めようとすればするほど情けなく「うっ、うっ」と嗚咽が酷くなる。