第3章 《僕》のオリジン
「ダ………ダメー!!!!」
「んぐっ」
アザミは緑谷の唇を両手で覆う。
「こ、こーゆーのはっ!こ、恋人としなきゃダメでしょ…!!?」
「え、だって、夢…」
「夢じゃない!!夢じゃないから!!」
「えっ」
「デクくん!寝ぼけてるでしょ?!
夢じゃないよ!!」
「…夢、じゃ、ない?」
「うん!!」
「…アザミちゃん、ホンモノ?」
「ホンモノ!」
「………うそ、」
「ほんと!」
「う……」
「う?」
「う………………、
わああああああーーーーーー?!!!!」
緑谷は一瞬で顔から足まで全身をカァァァッと真っ赤に染めあげる。叫ぶと同時にズザザザザーッと物凄い勢いでアザミから飛び跳ねた。
*
「本ッッッッ当に、ゴメンナサイッッ!!!!!!」
「も…もういいよ、デクくん!」
緑谷は額を砂浜に擦りつけ五体投地でアザミに謝罪する。
「ま、まさか!本物のアザミちゃんが居るとは思わなくて…ッ!!」
「…えぇっと、そうだよね」
「本当に、ごめんなさい…っ」
緑谷は涙目にながらアザミに何度も謝罪する。「アザミちゃんに、嫌われたら…僕は…ッ」そんな気持ちでいっぱいだった。
「はい」
「え?」
「これ、デクくんに渡したくて」
「これって…」
アザミは緑谷に自身のバイト先であるスーパーの袋をガサッと渡す。中身を覗くと…
「…スポーツドリンクと、ゼリー飲料?」
「うん。あとは菓子パンとか、栄養食品とか」
「な…なんで?」
「デクくんのお母さんから、デクくんがここでトレーニングしてるって聞いて」
「――えっ?」
「…無理、してるんじゃないかなぁ。
なーんて、思って……はい、差し入れ!」
本当は「私の安易な“頑張れ”のせいで、無理してるんじゃないかと思って」とは、ボロボロの緑谷を前にしてアザミは口が裂けても言えなかった。
「う"…っ」
「ちょ、デクくん?!」
「ごめ、アザミちゃ………、嬉しく、て」
「えっ?」
「――――僕は、
どうしても、雄英に行きたくて…
だけど、頑張れば頑張るほど、現実とのギャップが苦しくて…ッ」