第3章 《僕》のオリジン
(だって、他の人より何倍も頑張らないと僕はダメなんだ……!!!)
ズキンッ
「う"っ」
手が痛い。
腕も、足も、背中も、身体中が悲鳴をあげている。今日は夜の受験勉強の鉛筆すら持つのが辛いだろう。
(でも、勉強だってやらなくちゃ…!)
僕は頑張らなきゃいけないんだ。
同じ受験生…個性がある皆に追いつくためには、もっと…!
アザミちゃんの横に並べるようになるには、もっともっと…!!
「夢を…現実に…」
絶対、雄英に合格するんだ…っ
僕の夢のために!!
アザミちゃんに負担をかけさせたことを、帳消しにするために…!
「痛…ッ!うわあっ?!」
手に激痛が走り、冷蔵庫を引っ張る紐を緩めてしまった。その反動で顔から思いきり砂浜へずっこけ、ゴロゴロゴローッと転がる。ゴミだらけの浜辺で大の字になる始末だ。
「……くっそぉ…!」
砂辺で仰向けになる僕の瞳に、無限に広がる夕焼け空が飛び込んできた。
その雄大さのせいか、偉大さのせいか。
途方も無くて、あまりにも自分がちっぽけな存在だと怖くなってしまった。
(こんな事で、立ち止まってられない…ッ)
何故だろう、やるべき事なんて分かっているのに。気持ちが追いつかない。
(もっともっと、頑張らなくちゃいけないのに…ッ)
頑張らなきゃと思えば思うほど、今していることは無駄なんじゃないかって。無意味なんじゃないかって。悪い思考ばかり浮かんでしまう。
「…うっ…ッ」
何故、涙が出るんだろう。
あの大好きなオールマイトが、僕なんかを継承者にしようとしてくれているのに。
なのに、どうして。こんなに…
「…不安、なんだよぉ……ッ」
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「あれ?僕は…」
ここは…河原?
昔、かっちゃん達と水切りして遊んでいたところだ。
「海浜公園でトレーニングをしていたんじゃ…」
頭にもやがかかったみたいで、ぼんやりした思考をしていると「デクくーん!」と聞き慣れた明るい声で呼ばれる。
「……えっ、あれ?なんで此処にいるの…?!
アザミちゃん…!!」