第3章 《僕》のオリジン
―――――2日後、朝6時。
「ふん"っぬ"ーーーーっ!!!」
「ヘイヘイヘイヘイ!
なんて座り心地の良い冷蔵庫だよ!」
「ていうか僕、何で海浜公園でゴミなんて引っ張ってるんですか…?」
そう、僕はゴミだらけの海浜公園で不法投棄された冷蔵庫(その上に乗っているオールマイト)を引きずっている。
冷蔵庫、1ミリも動かないんだけどね…っ
「個性を譲渡する個性…それが私の受け継いだ“個性”!冠された名は“ワン・フォー・オール”!
ワン・フォー・オールはいわば何人もの極まりし身体能力が一つに収束されたもの!
生半可な身体じゃ受け取りきれず、四肢がもげて爆散してしまうんだ!」
というわけで、オールマイトから個性“ワン・フォー・オール”を受け取るために身体を作り上げるトレーニングをしている。
「ヒーローってのは本来、奉仕活動!
そこはブレちゃぁいかんのさ…
身体を作りつつ、この区画一体の水平線を蘇らせる!!」
オールマイトが冷蔵庫をメコメコと音を立てて小さく圧縮させていく。
最後は…
「それが君のヒーローへの第一歩だ!!」
言い切りるのと同時に冷蔵庫をぺしゃんこにしてみせた。そして朝日が昇り彼の背中に後光が差した。
静けさが染み込む朝、僕はその光景に息を止めた
「入試当日まで、10ヶ月で…身体を完成させなきゃ……!」
力を受け継ぐために、地獄のトレーニングが始まった。
*
(キツイ!!これをずっとか…)
早朝トレーニングをして。
疲れた身体に鞭打って学校行って半寝になることもありながら授業受けて。
夕方のトレーニングをして。
母にお願いしたメニューを食べて、夜に勉強して自主筋トレして。
眠ったら再び同じ1日の繰り返し。
(いやいや!
あのオールマイトに良くしてもらってるのに、僕は…っ!)
しばらくはオールマイト不在のトレーニングだ…何日後から顔出すって言ってたっけなぁ。朦朧とする意識でどうだったっけなぁと考える。
(せめて、トレーニングの効果が湧けば…!!)
オールマイトが乗っていない壊れた冷蔵庫をかろうじてズ…ズ…と引きずる。
「はぁ…はぁ…ッ」
寝たい。疲れた。今すぐ寝てしまいたい。
だけど僕は休むことも、弱音を吐くことも許されない。