第3章 《僕》のオリジン
「もうっ、寝ぼけてるの?帰るよ!」
「え、えっと…?」
「ほら、早く早くー!」
アザミちゃんは歩いているだけなのに、物凄いスピードで僕からどんどん離れていく。
「アザミちゃ……待ってよ!」
「置いてっちゃうよー!」
アザミちゃんは僕の方を振り向きもせずぐんぐん歩みを進めていく。
僕は置いていかれないよう必死に走るも、
「早っ…!?」
「ほらこっちだよ〜!」
少しもアザミちゃんに追いつけない。
なんか、今日のアザミちゃんはいつもと違う。
――――僕を置いて何処か遠くに行ってしまうのではないか。
何故かそんな風に思わされた。
そんなの、いやだ…っ
「待って…うわ?!」
アザミちゃんの手を掴んだと思ったらスルリとかわされてしまい、僕は鈍くさいことに躓いて再び勢いよく転んだ。
「痛ぁっ…!」
「…デクくーん!ふふっ」
「アザミ、ちゃん…?」
アザミちゃんは僕を見て微笑む。
しかし、それが何故かとても悲しそうに見えた。
「こっちだよー!」
「え、あれ?!ついさっきまでココに居たはず…?!」
手を伸ばせば届く距離にアザミちゃんは居たはずなのに、気づけば遠くで手を振っている。
「アザミちゃん…っ!待って!!」
「やっぱデクくんは、○○○…」
「えっ?!…なに?」
アザミちゃんの声が雑音に遮られる。
何を言っているのか聞き取れない。
「だから、デクくんは✕✕✕✕…」
「聞こえないよ…っ!」
聞こえないことに気を取られていたら、アザミちゃんは僕からますます遠くへ離れていた。
「デ…くん、△△△○○✕、…」
「アザミちゃんっ!待って…!!
いかないで!!!!」
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「はぁっ!!…はぁ…っ」
僕は砂浜に寝転がり、夜空の星に向かって手を伸ばしていた。
「夢…?」
ツゥーと目から涙が流れ、砂浜に吸い込まれていく。
「何で、涙が…」
アザミちゃんに何度近づいても遠ざかっていく夢で僕は起きた。