第3章 《僕》のオリジン
「やってみないとわかんないし…」
上目遣いで、消え入るような声になってしまった。
「なァにがやってみないとだ!!
記念受検か!!てめェが何をやれるんだ?!」
「………」
僕は言い返すことができなかった。
そんな僕を見てクラスメート達はクスクスと笑いを堪えた。
*
「放課後カラオケ行こう!」
「それっきゃねーな!」
「課題ダルいわ〜」
下校時刻になり、廊下で生徒達の浮足立つ声が響く。
(マウントレディが解決した事件、ヤフートップだ!)
僕は今朝のひったくり犯が巨大化した事件を思い出していた。その際にオタクモード全開で彼女についてメモをしていた。
(早く帰ってノートにまとめなきゃ)
ノートを見て、アザミちゃんに言われた事を思い出す。
『これはデクくんの財産だよ』
「ふふ……〜♪」
鼻歌混じりにノートを手にし、鞄に入れ……
「あっ」
「まだ話は済んでねーぞ、デク」
かっちゃんとその取巻き達が現れ、「カツキなにそれ?」「“将来の為の…”まじか?!く〜〜緑谷〜〜〜!!」と僕を再び嘲笑う。
「いっ、いいだろ返してよ!」
ボムッ
かっちゃんは予告もなく僕のノートを爆破した。
「あーーーーーー?!!!!ひどい…!!」
「一線級のトップヒーローは大抵、学生時から逸話を残してる」
無惨にも黒焦げとなった僕のノートをポーイと容赦なく窓から放り投げた。
「ッ!」
「俺はこの平凡な市立中学から初めて!唯一の!“雄英進学者”っつー泊をつけてーのさ
まー完璧主義者なわけよ」
(みみっちい…)
「つーわけで一応さ
雄英受けるなナードくん」
日常の表情からは有り得ないくらいにこやかな笑顔で僕の肩にポンッと手を置くかっちゃん。
しかし、その手からはモワモワと煙が立ち上がる。
情けなくも僕はビクッと震え上がってしまった。
(こ、怖い……でも……っ!)
それだけは、譲れない…ッ!!!
「それは、無理だよ…」
「あ"?」
「アザミちゃんが!
この中学で初めての、雄英進学者だから…っ!」