第3章 《僕》のオリジン
ひらひら、ひらひら
満開の桜が花びらを舞わす。
桜咲く、新学期。
僕は今日から高校受験生だ。
「えーお前らも中学3年ということで!
本格的に将来を考えていく時期だ!!」
(う"っ!……キ、キタァ!
進路の話ッ!!)
僕は心臓をドキドキさせながら担任の話に集中する。
たくさん悩んで決めた進路―――進学希望の、高校。
(事前の、進路希望調査票で書いたんだ…!)
担任に何を言われようと、頑張るって決めたんだ!アザミちゃんだって応援してくれたんだから…!
僕は机の下でグッと握りこぶしを小さく作り気合を入れる。
「今から進路希望のプリントを配るが、皆!!
だいたいヒーロー科志望だよね」
「「「「「「「ハーイ!」」」」」」」
「……」
担任はプリントを投げ捨て、まるで桜の花びらのようにヒラヒラと舞わした。
クラスメートの皆がヒーロー科志望は至極当然のように、一斉に返事をしながら個性を同時に発揮させる。
(僕はあんなに悩んだのに)
風を起こす者、物を浮かせる者、筋肉をムキムキ化させる者、髪を自在に操りだす者、ゴツゴツと体を岩化する者、火を腕から噴射させる者―――本当に、みんなそれぞれに。
呆気に取られ言葉が出ない僕以外の皆は、自分の個性を表現した。
その中で僕はコッソリと誰にも気づかれぬよう挙手をした。
(そっか…)
個性のある皆はヒーロー科を志望するのが普通で、担任も改めて進路希望を確認する必要もないのか。
あれだけ悩んで決めた進路は皆にとって普通のことで、何だか肩透かしを食らった気分だ。
「うんうん、皆良い“個性”だ!
でも校内で“個性”発動は原則禁止な!」
(こんなことで凹むな!!
それでも頑張るって決め―――)
「せんせえーーー!!!」
ビクッ
聞き慣れたとある男子生徒の声に反射して、僕の身体が跳ね上がってしまった。
だって
彼には幼い頃から酷い目に合わされており、それが体に染み込まされてきたから…!
「皆とか一緒くたにすんなよ!!
俺はこんな“没個性”共と仲良く底辺なんか、いかねーーーー
よ」
「そりゃねーだろ、爆豪!!」
そう、爆豪勝己―――幼馴染の、かっちゃんだ。