第1章 《 》の幼馴染
二人で泣きはらした顔のまま、手を繋いで夕日に向かって家へ帰った。
その時もやっぱりアザミちゃんが僕の手を引いて帰ったけれど、その日の僕はとても誇らしげな気持ちだったことを今も覚えている。
*
(懐かしいや。
…でも、あの時から変わらないなぁ)
アザミちゃんに手を引かれ、アザミちゃんの後ろ姿を見ながらついて行く僕。
……うん、でもやっぱり手を握って下校するのはちょっと。いや、かなり、恥ずかしいッ
だ、だ、だって…ッ!、
こ、恋人同士に見られちゃうんじゃあ…?!
そう思うと、胸が、きゅうぅって―――
「デクくん、何ブツブツ言ってるの?!
早くしないとタイムセール始まっちゃう!!」
「あっ、うん。ソウダヨネ」
そう、僕達はこれからアザミちゃんのバイト先であるスーパーのタイムセールへ行く。
残念ながら高校生が羨むようなデートでも何でもない。
「この間、バイト中にデクくんのお母さんに会ってさ!今日のタイムセールは行けないって言ってたから!」
私の社割で更に安くなるよ〜!と、ニカッと得意気に笑うアザミちゃん。
何度も言うが、周囲が羨むようなデートでも何でもない。けれど、アザミちゃんのとても楽しそうな姿にキュンとする。
姉的存在で幼馴染のアザミちゃんにすら僕の胸はきゅうっと苦しくなってトキメイてしまう。
これが他の女子ならどうなってしまうんだろう。
初恋もまだな僕には、到底想像もつかない。
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「はぁ〜!夕飯時のスーパーは混むねぇ〜!」
顧客目線として、改善の余地ありだ!と、意気込むアザミちゃん。
学校を出たときはまだ明るかった空も、今は夕焼け色に染まりだした。
スーパーからの帰り道、川沿いの土手を二人で並んで歩く。
「アザミちゃんのおかげでお目当てのものは買えたよ!」
「ふふっ!デクくんのお母さん、喜ぶといいねぇ!」
「でも、僕までこんなに安くしてもらっちゃっていいのかな…?」
何だかんだ申し訳ない気持ちになる。