第3章 《僕》のオリジン
「それにほら!お金って大事だし?
経営科なら役に立つこと知れるかなーと思って!」
「それ、本当に?」
「ははっ…本当、だよ?」
憂い顔で笑うアザミちゃんに、これ以上問い続けることはできなかった。
「僕、あれから…あの日から、ずっと心配してたんだ。
だから、アザミちゃんに会おうって連絡もらえて、久々に会えてすごく嬉しかったんだ」
「デクくん…」
「それに―――僕も、行きたいんだ」
「え?」
(言うんだ!
言うんだ、緑谷出久…!!)
僕はすくっと立ち上がり、なるべく平らな石を選び握り締める。川に向かって腕を大きく振りかぶり、石に回転をかけたそれを投げた―――
「アザミちゃんと同じ、雄英高校に
ヒーロー科に、行きたいんだ…っ!!」
言葉にすることで、自分自身へ宣戦布告をした。
誰にも知られずに胸の内に秘め続けていたら、それこそあってないようなものだと思ったから。
この想いを誰かに聞いてもらえるのなら、アザミちゃんに聞いてほしかったんだ。
僕の決意表明を…!!
投げた石が回転しながら水の上をタッタッタッタッ―――と駆け抜けた。
昔の、水切りの記憶が蘇る。
『かっちゃん、すごい!水切り8回も跳ねたや!』
『そーゆーデクは何回だァ?』
『ゼ…ゼロ回…』
『だっせー!!』
あの頃はできなかったけど。
そして今でさえ幼少期のかっちゃんに負けてしまうけど、水切りは成功し4回跳ねた。
どんなに嘆いたって僕は無個性で、無個性の僕で勝負するしかないんだ。
無個性の僕だって、ヒーローに成れることを証明したい。憧れのヒーローになりたいんだ。
この現状から未来へ、超えていきたい。
できるかも、いやダメかもと。
情けないことに僕は今も不安に揺れている。
それでも暗闇でもがき続けているのは、幼い頃からあたためていた“ヒーローになりたい”という想いを、恥じるようなことはしたくないと思ったんだ。
「―――――…デクくん」
「は、はいっ!」
……なんて、
1人で思いふけってしまった。
例え、いくら思い描いても現実的に厳しいことには変わりない。
(アザミちゃんの、反応が怖い…ッ!)