第3章 《僕》のオリジン
「きゃーあはははははー!!!」
「アザミちゃん!!!!!
止まってーーーーー!!!!!」
風をも追い抜いてしまうぐらいの猛スピード。
車輪は壊れるんじゃないかってくらいシャーーーーッと悲鳴を上げ、僕はうわあああああと情ない叫び声を上げる。
自転車から振り落とされぬよう、そしてアザミちゃんに決して触れぬよう必死に荷台を握り締めた。
急な下り坂をやっと下り終え、線路沿いの平坦な道に出た。
「っはー!楽しかったね、デクくん!」
「僕は怖かったよ…!!?」
うん、色んな意味で怖かった!!
まだ心臓がドキドキと高速で鳴り響く。
寿命が縮まったかもしれない…!!
そんなことは露知らず、アザミちゃんは終始楽しそうだ。
「というか、僕が自転車漕ぐよ!!」
「えー?!今更すぎる!」
「う"」
僕もそう思う。
アザミちゃんに…女の子に自転車漕がして、男の僕が荷台に乗るなんて!可笑しい話だと思う。
だけど、言い訳させてほしい。
そんな考えが出来ないほど余裕がなかったんだ。アザミちゃんに会えたことが嬉しくて、その場にいるだけですごくすごく緊張してたんだ。
「っていうか、初めからデクくんに漕がせるつもりないから!」
「え、どうして!?」
「だって、デクくんが自転車漕いだら坂道なんて通らないでしょう?」
「んんん?!そうゆう理由??!」
そんな緊張もいつもと何ら変わらないアザミちゃんのおかげで、あっという間に解かれてしまったけれど。
「ねぇ、また坂道いい?」
「ダメだよ!?」
「え〜つまんないのー!」
温度差の異なる僕らの横を、電車がプァーンと警笛を鳴らしながらガタンゴトンと通り過ぎる。
「ねえねえ、デクくん…☓☓☓、だった?」
「何?!聞こえないよ!」
電車の通過音がうるさくて聞き取れず、僕は声を張り上げて聞き返した。
今度は何を言い出すつもりだ?!もう坂道はゴメンだぞ?!
「元気だった?」
「え、?」
予想外の言葉でポカンとしてしまった。
「最近、…私が高校生になってから。
全然、会えなかったから」
「えっと…そ、そうだね。アザミちゃん、忙しかったんでしょ?」
実は、僕達は久しぶりの再会だったりする。